JSA

 

日本国憲法と放送法に厳格に基づく公共放送の確立を強く求める
(事務局長談話)



 1月12日以降のマスコミ報道と、13日の長井暁NHKチーフプロデューサーの記者会見等によって、2001年1月のNHK教育テレビ特集番組「問われる戦時性暴力」の異例の改変が、放送前の政治家による「指摘」を受けて行われたという「疑惑」が明るみにされた。その後、NHK幹部との放送前面会の事実を、名前が出た中川現経産相は否定しているが、安倍現自民党幹事長代理(当時官房副長官)は認めた上で、圧力をかけたことは否定している。然しながら、少なくとも安倍氏については、事前に放送内容を知り、「公正中立な報道」を要請した事実が、同氏のコメント等によって判明している。しかも、19日に行われたNHK幹部の記者会見では、放送番組の事前説明は通常業務の範囲内であると説明されている。このような事態は、権力を持った政治家の「検閲」が日常的に行われていたということを限りなく疑わしめるものである。
 周知のように、日本国憲法第21条には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。」と記されており、また、放送法第3条には、放送番組が「何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と記されている。もし放送番組が時の権力者によって検閲され改変等がされるとすれば、それはマスコミが権力の意のままに操作されることを意味する。これは、民主主義の根幹を危うくする事態と言わなければならない。
 私たちは、上記のように、現在までに明らかになった事実の範囲でも、公共放送のNHKに対し「検閲」が行われているという疑惑は否定できないと言わざるを得ない。今後、国会等の場において、今回の問題はもちろん、その他の「事前説明」についても徹底して真相を解明し、公共放送が日本国憲法と放送法に厳格に基づいて行われるよう強く求めるものである。


 2005年1月25日
日 本 科 学 者 会 議   
事務局長 片平洌彦