JSA

☆日本科学者会議は5月29-30日に第40期第1回幹事会を開催し、以下の決議を採択しました。
 6月10日付で内閣総理大臣、外務大臣、防衛庁長官、各政党、衆参両議長へ送付し、その旨報道関係各社へ発表しました。

 

「戦争する国」づくりのための日本国憲法第9条改悪に強く反対し、第9条の堅持を求める

 現在、イラクへの自衛隊派兵なども「合憲」であるという「解釈改憲」から、憲法そのものを変えようという「明文改憲」への動きが急ピッチで進められている。
長年改憲を党是としてきた自民党は、昨年の総選挙で「2005年11月までに改憲草案をまとめる」と公約し、党内に設置された改憲プロジェクトチームは、第9条を含む改憲に向けて作業を進めている。与党公明党は「論憲から加憲へ」として、参議院選挙前に、前文と第9条を含む「論点整理」を行うと表明している。「お国のために命を投げ出す人を」と発言した議員を抱える民主党も、2004年末までに改憲草案をまとめる予定という。財界も昨年4月に経済同友会が改憲の意見書を出すなど、改憲に向けて動いており、マスコミにおいても、読売新聞が去る5月3日の憲法記念日に集団的自衛権をも容認する「第3次改憲案」を発表するに至っている。
 すでに、改憲を実施に移すため、自民・公明・民主各党などの議員で構成する憲法調査推進議員連盟(中山太郎会長)は、2001年11月に「日本国憲法改正国民投票法案要綱」をまとめている。この内容は、@第9条「改正」を「環境権」や「プライバシー権」等国民の賛成が得られやすいものと抱き合わせた一括投票方式を採っている、A「改正」の承認は「有効投票総数の過半数」とし、承認を得やすくしている、B「公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動」「予想投票の公表」等を禁止し、報道・評論の規制等、マスコミへの大幅な規制を課し、これらの規制違反には罰則を科す、など、重大な内容を含むものとなっている。
 このような、第9条「改正」を主眼とする動きが急ピッチで進められているのは、第一に、安保条約という名の日米軍事同盟のもとで、米軍の起こす戦争に日本の自衛隊の参加が求められているからであり、第二に、多国籍企業化した日本企業の海外での権益を武力を後ろ盾として維持しようとしているからである。「武力攻撃事態等」を冠した5法案等の有事関連7法案が国会に提出され、成立が強行されようとしているのも、これらの理由からである。まさに「戦争する国」づくりが行われていると言わざるを得ない。
 しかし、21世紀に至った世界史の主方向は、アメリカのイラク侵略戦争に世界中で多くの人々と国々の政府が反対していることからも明らかなように、大国による軍事支配の方向ではなく、異なる文化・価値観を持つ国々の平和的共存の方向である。日本国憲法第9条も、真に国際平和に貢献するものとして、その価値が諸外国で高く評価される状況が生まれつつある。
 この21世紀の歴史的状況を踏まえて、私たちは、「戦争する国」づくりのための日本国憲法第9条改悪に強く反対する。そして、国際的には米国・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を含む世界各国と真の平和的友好的な関係を築き、国内的には基本的人権の擁護・国民主権に基づく政治を確立することを求める。
 本会は会則において、活動目的のひとつに「科学の反社会的利用に反対し、科学を人類の進歩に役立たせるよう努力するとともに、国内国外の平和・独立・民主主義・社会進歩・生活向上のための諸活動との連帯をつよめます」と記している。私たちは、科学者の立場から、憲法第9条改悪に反対する諸団体と連帯して、「戦争する国」づくりに反対し平和を確立する運動をいっそう強化する決意をここに表明する。

2004年5月30日
日 本 科 学 者 会 議