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【決議】  国立大学の独立行政法人化に強く反対し、大学の自治・学問の発展と
      社会への貢献を高めるための行動を国民的にすすめることを訴える


 国立大学の独立行政法人化問題は、国立大学協会(以下、「国大協」という)の設置形態検討特別委員会専門委員会連絡会議が「国立大学法人化についての基本的な考え方」(以下、「基本的考え方」という)と「国立大学の法人化の1つのありうる枠組」(以下、「枠組」という)からなる「検討案」をまとめたことによって、切迫した、きわめて重大な局面を迎えている。この「検討案」は、「基本的考え方」では、国大協のこれまでの主張を展開し、国の産業力強化の面からのみ高等教育研究を位置づけることは「高等教育研究の退廃」をもたらすことを警告している。その反面、「枠組」では、「外部有識者の運営への参画」の一層の「拡大」、中期目標・中期計画の文部科学大臣の「認可」(もしくは文部科学大臣が「定める」)、「数値目標」や「積極的」な「教員の任期制」の導入、「評価結果の予算配分への反映」、「特別会計借入債務」の「計画的」「返済」など、「長尾試案」にさえなかった諸点が盛り込まれている。これは文部科学省にすり寄っているとみられた「国立大学法人の枠組」(長尾試案、2001年2月7日)よりもさらに大きく後退したものといわざるを得ない。この「枠組」がそのまま国大協の案となるならば、通則法の枠組にもとづいた法人化が避けられず、日本の高等教育や学術研究は崩壊の淵に立たされることになるであろう。もし、国大協が「国立大学の法人化」ということで、このようなことしか提起できないのであれば、国大協は「国立大学法人」の取得を断念する勇気をももつべきではないだろうか。
 そもそも、国立大学の独立行政法人化問題は、「行財政改革」というおよそ教育研究になじまない論理によって提起され、さらに「競争的環境」や国立大学の種別化・再編統合を重視する大学審の考え方と、産学官の連携・融合によって「科学技術創造立国」を目指す国家の産業政策とが重なって急浮上してきたものである。今年3月に閣議決定された第2期科学技術基本計画では、明確な目標の設定と評価に基づく資源の重点配分、競争的資金の倍増、任期制の積極的活用などを柱として打ち出している。そこでは、産業政策のなかに、高等教育や学術研究を全面的に取り込んで、産業技術力の強化や産学官の連携・融合のいっそうの推進が図られようとしており、国立大学の独立行政法人化問題もその方向に沿った梃入れが強まっている。
 しかし、科学・技術の発展にとって大切なことは、「学問の自由」や「大学の自治」によって保障されている自由に研究できる環境の整備であり、基礎研究の重視やバランスの取れた研究の発展である。産業に直接役立つものだけに特化された研究のみが追求されるならば、たとえ一時的に成果が得られることがあったとしても、長期的にみれば、学術研究の衰退をひきおこすことになるであろう。「知の時代」といわれるほど、今日では社会のなかで科学・技術が果たす役割がきわめて大きくなってきており、それだけに、科学・技術にたずさわる研究者は、自らの研究の社会的な意義や責任に無関心であることは許されなくなってきている。学術研究の場である大学も、人類の進歩や福祉に貢献するとともに、国民や地域に開かれたものである必要がある。
 現在、国立大学の独立行政法人化で目指されている方向は産官による「知の管理」であり、これは、これまでの大学における学問的蓄積を崩し、知の継承を脅かすものとなっている。新たな局面を迎えて、私たち日本科学者会議は、国立大学の独立行政法人化の反対を改めて確認するとともに、大学の自治・学問の発展と社会への貢献を高めるための行動を国民的にすすめることを訴える。

2001年5月27日
                         日本科学者会議第34回定期大会