JSA

  大学の自治を侵害し、学問の自由を脅かす「学校教育法等の一部を改正する法律」の
強行採決に強く抗議する(声明)

 政府・文部省は、学校教育法、国立学校設置法、教育公務員特例法等の法律改正案を、3月9日国会へ上程し、4月27日衆議院において、5月21日参議院において、ともに十分な審議を尽くすことなく採決を強行し可決した。
 一連の法律「改正」は、昨年10月26日、大学審議会が文部大臣に答申した「21世紀の大学像と今後の方策 − 競争的環境の中で個性が輝く大学−」を具体的に実施するためになされたものであるが、これらの法律は、大学の自治を侵害し、大学における民主主義を弱体化させ、ひいては学問の自由を脅かしかねない「新大学管理法」とでもいうべき重大な内容をもっている。
 今回の法律「改正」の主な内容は、以下の2点である。 
 第1に、国立大学に組織運営体制の「改革」として、学外者委員で構成する「運営諮問会議」を設置し、大学の教育研究上の計画、評価等に関する重要事項について、学長に対して助言または勧告を行う、としている。
 少数の学外者に、教育研究活動の評価を含む大学の基本的事項について「助言」ないし「勧告」の法的権限を与えるという「運営諮問会議」の設置は、政府・財界が大学の自治への不当な干渉・介入を行ない、大学の自治を侵す制度的な機構をつくるものといわざるを得ない。
 第2に、教授会の権限を限定し、さらに評議会の構成を変更し、学長の権限を一層強化するという内容を持っている。評議会の構成は、学長、学部長、研究科長、教養部長、付置研究所の所長とされ、その他に部局選出の教授と学長指名の教員を加え得るとされた。評議会の審議事項に、大学の基本的計画、教員人事の基本方針などが加えられ、評議会の権限が強化された反面、教授会の自治権限は大きな制約を受けることになった。しかも、評議会もあくまで審議機関とされ、決定権は学長にあるとされたのである。
 この法律「改正」は、大学における意思決定の機構は、教授会の自治機能を大きく制約し、運営諮問会議による外部の意向を反映しつつ、権限を強化された評議会を通して学長による専断的運営を導きかねない極めて危険なものである。大学自治の基本は、学生を含む大学の全構成員により、自主的、民主的に大学運営が行なわれていくことである。この大学の自治が憲法に保障された学問の自由を保障する制度であることはいうまでもない。今回の法律「改正」は、この大学自治の基本理念と相容れないことは明らかである。
 一方政府は、本国会で、省庁再編法案の切り札として国立試験研究機関の独立行政法人化を含む独立行政法人通則法案をも提出した。この国立試験研究機関の独立行政法人化は、政府の国家公務員25%削減計画とも連動しており、国立試験研究機関のもつ公共的役割を変質させ、国が本来果たすべき国民生活に対する直接的な責任を放棄するものである。
 国立大学、共同利用機関、特殊法人研究機関等においては、2003年をめどに独立行政法人化を検討するとされている。一方的な競争原理・効率主義の導入による研究・教育の変質や強権的な、あるいは財政誘導による中央集権的な管理組織への再編はもちろんのこととして、独立行政法人化の先取りなどを絶対許すわけにはいかない。

 われわれは、大学の自治を侵害し、学問の自由を脅かす「学校教育法等の一部を改正する法律」の強行採決に強く抗議するとともに、法「改正」の意図の具体化を許さず、来るべき21世紀に向けて、国民とともに自主的、民主的に大学改革をすすめ、国民のための教育・研究をますます発展させていくことをあらためて決意表明するものである。
1999年5月30日
  日本科学者会議第33回定期大会


戻る

トップへ戻る