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動燃再処理工場の火災・爆発事故に際し,原因の徹底的究明とプルトニウム・リサイクル政策の根本的見直しを求める決議

 3月11日,茨城県東海村の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)再処理工場の低レベル放射性廃液アスファルト固化処埋施設で火災と爆発が発生し,37名の関係者が被曝し,プルトニウムを含む長寿命の放射性物質が環境に放出された.事故原因は末だ明らかではないが,この事故は日本で起きた原子力施設の事故としては最大級のものである.
 再処理はもともと核兵器用プルトニウムの回収技術として開発されたもので,これを発電用軽水炉の使用済燃料に安易に適用したため,さまざまなトラブルが発生してきた.今回事故の起きた動燃再処理工場は試運転の段階からトラブルが続出し,着工から操業開始まで10年を要した.操業後も事故・故障が多発し,今日まで17年間に処理した量は処理能力の約5年分に過ぎない.このような状況の中で今回の事故を考えるならば,軽水炉燃料の再処理技術そのものが未だ確立しておらず,安全性も不十分な技術と指摘せざるを得ない.
 今回の事故に関する動燃の対応はうそや辻複合わせなどが目立ち,一昨年12月の「もんじゆ」事故の教訓がまったく活かされていないことが明らかになるなど,その「体質」に対し国民の厳しい目が向けられている.かつて,1964年に原子力委員会は再処理工場の建設が決まると,再処理技術は外国で確立しており,これを導入するので日本で研究開発の必要はないとして,日本原子力研究所における再処理研究予算を凍結した.こうして基礎研究が切り捨てられ,日本の再処埋技術は「根無し草」となってしまった.同時に,動燃では現場の技術者の声や各方面の批判を無視して,導入技術による工場建設がスケジュール優先で強行された.動燃内部の良心的技術者の声は抑圧され,労働組合は当局の意向に沿うように変質させられた.
 今回の事故は,このような基礎的研究を無視した非科学的な研究開発方針および「公開・民主・自主」の原子力平和利用三原則を踏みにじった運営の当然の帰結として発生したものである.だからこそ国民世論は,事故そのものだけではなく動燃の「体質」をも間題にしているのである.現在,動燃の「解体」を含めた処置が進められているが,上記経緯から明らかなように,これは動燃の「体質」だけの問題ではなく,科学技術庁,原子力委員会,原子力安全委員会をも含むわが国のこれまでの原子力開発体制そのものの「体質」が問われているのである.動燃の単なる「解体」では事態はまったく改善されないことは明らかである.
 「もんじゆ」事故および今回の事故は,政府の進めようとしている「プルトニウム・リサイクル路線」が技術的見地からも完全に破綻したものであることを示している.したがって,政府が強行しようとしている軽水炉でのプルトニウム利用すなわち「プルサーマル利用」を含めた核燃料サイクル政策を根本的に見直すとともに,青森県六ケ所村の再処埋工場の建設を中止するよう強く要求する.
 日本科学者会議は,原子力発電問題全国シンポジウムなどで上記の問題を繰り返し指摘してきた.今回の事故およびその後の事態は,われわれの指摘が正しかったことを示したものであるといえる.われわれは,政府およぴ原子力委員会に今回の事故原因の徹底的究明とわが国の原子力開発全般に関する根本的見直しを,改めて求めるものである.  
       1997年5月25日    日本科学者会議第32回定期大会