38 2003年1月7日発行

 

JSA学術情報ニュース

日本科学者会議学術体制部

 

 

   (TEL) 03-3812-1472

 

(注:このニュースではホームページを「HP」と表記しています。)

1.全般

中教審が教育基本法改正と振興計画の中間報告

 中央教育審議会は2002年11月14日、教育基本法見直しと教育振興基本計画策定の中間報告を出した。公共意識、国や郷土愛、家庭の役割などを盛り込んでいる。(中教審HP= http://www.mext.go.

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toushin/021101.htm)

 中央教育審議会(会長・鳥居泰彦慶応義塾学事顧問)は2001年11月26日に遠山文部科学大臣から「教育振興基本計画と新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方」について諮問を受けて以来、総会を11回、その下に設置された基本問題部会を16回開催し、約1年間にわたって審議を重ねてきたが、2002年11月14日の第26回総会において中間報告をとりまとめ、遠山文部科学大臣に提出した。「郷土や国を愛する心」「公共に主体的に参画する意識」「教育における家庭の役割」などを入れた教育基本法の見直しと、「教育振興基本計画」の策定を求めている。今後、「1日中央教育審議会」(公聴会)や教育関係者・有識者等からのヒアリング、パブリックコメント等を通じて意見を聞きながら答申に向けてさらに議論を続ける予定。 (各紙11月15日付、文部科学広報12月10日付)

 

総合科学技術会議が「学術会議の在り方」中間報告

 日本学術会議の在り方の調査・検討を進めてきた総合科学技術会議の専門調査会(石井紫郎会長)による中間まとめが第22回総合科学技術会議で了承された。学術会議の役割を1)科学者の交流・情報交換とそれを通じた科学の水準の向上、2)政府に対する情報提供・助言を通じた政策への寄与、3)社会への科学に関する情報発信と社会からの意見・要望の伝達、と規定。現在の3年ごとに会員全員が交代する「期制」を見直し、定年制ないし任期制導入、会員選出には科学的業績を持ち学術会議の使命を理解した者を現会員による推薦・投票等により選出、現7部門を2〜3部門とする、などとしている。 (科学新聞11月22日付)

 

科学者とマスメディアのすれ違いを調査

 情報発信した研究成果がマスメディアで正しく伝わったかどうかについて、基礎科学研究に携わる研究者自らがアンケート調査を進めている。最先端の研究も社会への積極的な情報公開が求められる中で、メディアとのコミュニケーションギャップを考えようという試み。企画したのは渡部潤一・国立天文台助教授ら。同天文台は1998年に国立の大学・研究機関では初めての本格的な広報部門を発足、同助教授は広報普及室長を務めてきた。 (日経11月29日付)

 

ILO理事会が「公務員の労働基本権制約」見直し勧告を採択

 国際労働機関(ILO)理事会は11月21日、日本政府が閣議決定した公務員制度改革大綱は公務員の労働基本権を制約しているとして、見直しを求める勧告を採択した。連合などが2002年2月に「ILO条約に違反している」と提訴したのを受けて出された。全労連も3月に提訴していた。総務省は「わが国の実情を十分理解した判断とは言えず、承服しがたい」としている。(毎日、朝日、産経1122日付)

 

改正学校教育法成立大学評価義務付け、段階的是正措置、専門職大学院設置など

 私大を含む全大学に第3者機関の評価を義務づける、法令違反の公私立大学等に対する段階的な是正措置を可能にする、ビジネススクールなど専門分野の実務家を養成する「専門職大学院」の設置を可能にするなどの学校教育法改正が11月22日の参院本会議で自民、公明、保守の与党3党と民主党などの賛成、共産党、社民党の反対で可決、成立した。この法律は2003年4月1日から施行される。ただし大学評価については2004年4月1日から施行される。 (各紙11月23日付)

 

法科大学院(ロースクール)関連法成立

 法科大学院を法曹養成の中核機関に位置づけ、司法試験のあり方など法曹養成制度を抜本的に改革する「法科大学院教育・司法試験等連携等法」と「改正司法試験法・裁判所法」が11月29日の参院本会議で、自民、公明、保守の与党3党などの賛成多数で可決、成立した。同連携等法は2003年4月から、改正司法試験法は2005年12月からなど、法律によって段階的に施行される。 (読売11月30日付)

 

沖縄大学院大学候補地、3か所に絞り込み

 政府と沖縄県は12月3日、沖縄振興策の一環として設立準備を進めている「沖縄大学院大学」の建設候補地を糸満市喜屋武、恩納村、北中城村の3地区に絞った。政府は2月ころまでに建設地を決定する方針。2005年の研究機関創設、2007年の大学院生受け入れ開始をめどに、準備を進めている。 (読売12月3日夕刊)

 

技術経営(MOT)大学院相次ぎ登場

 技術と経営の両面に強い人材を育てる技術経営(MOT)大学院が相次いで登場する。4月に早稲田大学、芝浦大学、九州大学などが新設、2004年以降も同志社大学、武蔵工業大学などが続く。これまでも1999年に奈良先端科学技術大学院大学が、2002年4月に東北大学が開設している。経済産業省によると、アメリカでは200以上の大学がMOT課程を設置しており、そこで修士号を取得する企業人は年間1万人に達する。日本はMOT教育機関の定員が来年度にやっと合計約300人。 (日経12月4日夕刊)

 

学術会議天文研連が声明「トップダウン政策の見直しを」を発表

 日本学術会議天文学研究連絡委員会は12月9日、声明「日本の科学を疲弊させるトップダウン政策の見直しを」を発表した。声明では、「すぐ結果の出る応用・開発」研究に偏った重点配分を過度に進めており、基礎的な科学・学術を軽んじていること、プロジェクトのランク付けが専門家のしっかりした評価を欠いたまま官僚主導により短期間でなされ大きな禍根を残すものであること、などを指摘している。 (天文研連HP= http://sunrise.hc.keio.ac.jp/~mariko/kenren/tenmon.kenren.html)

 

大学設置審が15大学来春開校を答申

 文部科学省の大学設置・学校法人審議会は12月11日、2003年度の開校を目指して文科相から諮問された15大学の新設を含む学部・学科の増設45件、大学院の新設と研究科・専攻の増設96件を認めるよう答申した。少子化の影響を受け、新たに開校する公私立15大学のうち13校が既存の短大を改組・廃止しての設置となる。また、高度専門職業人を育成するために来年度新設される「専門職大学院」への移行を予定して、早稲田大、芝浦工大に技術マネジメントなど3専攻が発足する。 (朝日、東京、日経、読売など12月12日付)

 

総合規制改革会議が第2次答申

 政府の総合規制改革会議は12月12日、小泉首相に第2次答申を提出した。この中で医療、福祉、教育、農業の4分野を「官製市場」と名づけ、株式会社参入を含む大胆な規制緩和の必要性を掲げたが、省庁などの抵抗で具体的成果は乏しい。教育分野では、大学院レベルの職業実務教育分野への株式会社の参入などを検討している。 (各紙12月13日付)

 

構造改革特区法が成立

 地域を限定して規制を緩和し、経済の活性化を図る「構造改革特別区域法」が12月11日午後の参院本会議で、与党3党と民主党などの賛成多数で可決、成立した。2003年4月から地方自治体からの申請を受け付け、来年夏前には特区第1号が誕生する見込み。特区法には学校教育法や農地法など14の法律の17項目の規制について特例措置を盛り込んだ。特区認定の細かな条件などは、今後政省令や通達の改正で定められる。 (読売12月11日付夕刊)

 

総務相が私大補助金の削減を勧告

 片山総務相は12月17日、経営にゆとりがある私立大や私立短大への人件費補助を大幅削減することなどを求める勧告書を遠山文部科学相に手渡した。文部科学省が私学経営安定のため学校法人に交付している「経常費補助金」は、今年度約3千2百億円。勧告書によると、13法人が50億円以上の収入超過にもかかわらず補助金を交付されていた。 (読売12月18日付)

 

東北大がノーベル賞田中耕一氏の講座を設置

 東北大は12月17日、ノーベル化学賞を受賞した島津製作所フェローの田中耕一氏(43歳)を2003年1月から客員研究員に招聘することを正式に決め、同大大学院工学研究科に「先端ライフサイエンス講座」を新設した。学部生と大学院生を対象に、来年度から年に数回、手中講義を行う予定。 (読売12月18日付)

 

国家公務員定員来年度1879人減

 総務省は12月20日、来年度の国家公務員の定員を今年度より1879人減らすことを決めた。業務効率化などで4972人減、治安や出入国管理体制強化などで3093人増、差し引き1879人の純減。このほか林野の現業職員257人を減。 (読売、東京など12月21日付)

 

家永三郎さん死去教科書検定を裁判で問う

 32年余にわたる教科書検定訴訟の原告として、国の教育へのかかわり方を問い続けた歴史学者で元東京教育大学教授の家永三郎さんが11月29日夜、心不全のため東京都内で死去した。89歳だった。1965年の提訴以来、3次にわたる戦後最大級の教育裁判で、一貫して「検定は学問や表現の自由を保障した憲法に違反する」と主張した。その名を冠して「家永訴訟」と呼ばれた。 (朝日12月2日付)

 

2.「知的財産」関連

知的財産WGが報告書

 科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会の知的財産ワーキンググループ(伊藤弘昌東北大学未来科学技術共同研究センター長)は11月1日、大学に教育、研究のほかに知的財産を生み出す“第3の役割”を認識させるとともに、研究成果を積極的に還元するシステムの整備を促進させるため、その参考となる考え方を検討した『知的財産WG報告書』をまとめた。7月に策定された知的財産戦略大綱に基づくもの。 (科学新聞11月15日付)

 

知的財産基本法が成立

 発明や著作物など知的財産の権利保障を推進する知的財産基本法が11月27日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。大学での発明を企業が積極的に利用することを促しているほか、企業などに対して、発明者の適切な処遇に努めることを求めている。 (読売11月28日付)

 

日立元社員の発明に3千5百万円支払い命令

 日立製作所の元社員が、同社にCDなどの光ディスク読み取り装置の関連技術を発明した「相当の対価」を求めた裁判で、東京地裁は11月29日、職務上の発明に関する同種の裁判では過去最高となる約3千5百万円の支払いを命じた。職務発明を積極的に評価してきたとされる同社が、追加の支払いを命じられたことは、発明の対価をめぐる産業界の対応にも影響を与えそうだ。 (読売11月30日付)

 

都道府県・政令指定都市の3/4が知財戦略に着手

 特許移転、産学連携の支援など知的財産戦略に取り組む自治体が増えている。日経産業消費研究所が都道府県・政令指定都市を対象に10〜11月にかけて調査し、全自治体から回答を得た。それによると、着手済みの自治体が4分の3(35道府県8政令市)を占め、特許を活用した共同開発に助成する制度も5分の1が整備している。 (日経12月2日付、詳細は12月2日発行の日経産業消費研究所「日経地域情報」に)

 

3.産学連携関連

高校・大学生の特許コンテストを来年度から

 文部科学省と特許庁は、高校・大学生を対象に、独創的な「発明」を手がけて、その特許をとるコンテストを来年度からスタートさせる。入賞者には出願のノウハウも伝授、取得までを実体験してもらう。 (読売11月2日付)

 

30大学、50社が産学協同コンソーシアム設立へ

 技術、経営の両面に精通した人材を育成するための産学協同プロジェクトが12月に始動する。島津製作所、日立製作所など50社と慶応、早稲田など30大学がコンソーシアムを設立し、技術経営(MOT)を学ぶ課程を大学院に設け、企業が開発した技術を事業化できる人材を育成する。 (日経11月4日付)

 

東大と野村證券が産学連携モデルの共同研究

 東大と野村證券は11月12日、産学連携の手法を共同で研究、開発すると発表した。大学の持つ先端技術を資本市場からの資金調達で事業化して世に送り出すなど、多種多様な連携のモデルを開発し、大学と産業界の協力を後押しする。野村證券からは金融研究所の高須和祐部長が東大客員教授に就任、社員3人も加わる。東大教授を加えた総勢6人で証券化や私募債・株式発行など市場の資金調達力を産学連携に生かすための土台作りを進める。 (毎日、日経、朝日など11月13日付)

 

第2回産学官連携サミット開催

 第2回産学官連携サミットが11月18日、東京の赤坂プリンスホテルで開催された。尾見幸次前科学技術政策担当大臣と田中耕一島津製作所フェローの特別講演の後、日米の産学官で活躍する研究者・企業人・知事に加え、フロアーからも参加しての活発なパネルディスカッションが行われ、最後に産学官それぞれの立場で重点的に取り組むべき事項を掲げた共同宣言が採択された。(科学新聞11月29日付)

 

千代田区と区内の11大学が連携協定締結

 千代田区と区内に本部を置く11大学(大妻女子、共立女子、上智、専修、東京家政学院短期、東京電機、二松学舎、日本、日本歯科、法政、明治)が12月11日、地域発展に関するさまざまな分野で連携協力する基本協定を結んだ。区は歴史や街づくりを体系的に研究する”千代田学“のようなテーマへの助成も考えており、今後、具体的な活動を検討していく。 (産経12月12日付)

 

「企業等との共同研究」による共有特許等の平成13年度出願件数が過去最高に

 文部科学省が取りまとめたところによれば、共同研究の実施件数は増加傾向が続き、平成13年度には過去最高の5,264件が実施された。共同研究の結果生じ、企業と大学等との持分により共有となった「共有特許」等の出願件数についても過去最高の88件となっている。 (文部科学省HP= http://

www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/sangakub/

 

4.大学法人化関連

国大協が法人化後の会計制度、人事制度などを検討

 国立大学協会は11月13-14日に総会を開き、「国立大学法人」化後の会計制度、人事制度など検討した。また、14日総会終了後開かれた学長懇談会では、文部科学省から「国立大学の法人化の作業スケジュール」(案)、「国立大学法人(仮称)の仕組みの概要」などが説明された。

 

世界科連会長が国立大学独法化反対運動を支持

 国立大学独法化阻止全国ネットワーク(代表・山住正己都立大学名誉教授)は去る10月15日、独法化がユネスコの「高等教育宣言」等に違反することを訴えるアピール文をユネスコに送るとともに、世界科学者連盟にこのアピールの支持を求めていたが、これに対し世界科連会長のAndre Jaegle氏は11月20日、各国役員にメールで支持を訴えた。(国立大学独法化阻止全国ネットワークHP= http://www

03.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html 世界科学者連盟HP= http://assoc.wanadoo.fr/fmts.wfsw/)

 

2005年度統合・独法化の都立4大学・短大も非公務員に

 都は、都立の4大学・短大(都立大、科学技術大、保健科学大、都立短大)の2005年度統合時に行う独立行政法人化で、職員を非公務員とする方針を明らかにした。これまで制限されていた兼業・兼職規制は大幅に緩和される見込み。しかし、新大学での教育・研究の業務をきちんとしてもらうことが条件で、都は大学外の職場との勤務割合や給与の支払い割合のあり方など、細部の調整を開始。大学側と教員の利害が反した場合の扱いや、教員の発明や特許などの権利、報酬のあり方も検討する。なお、都立新大学は人文、法、経済、理、工、保健科学の6学部と、人文科学、法学政治学、経済学、理学、先端科学技術、工学、保健科学、総合都市の8研究科で構成される。 (東京11月30日付)

 

5.大学評価関連

文科省が21世紀COEプログラム採択理由、事業概要を公表

 文部科学省は11月21日、21世紀COEプログラムの採択理由を公表するとともに、不採択理由も各大学に通知した。採択基準が不明確との批判があったが、その後審査部会などを開催し、採択理由を明らかにした。日本学術振興会のホームページ(http://www.jsps.go.jp/)に掲載されている。 (日経11月22日付、科学新聞11月29日付)

 また、採択された113件について「採択拠点の事業概要」が文部科学省のホームページ(http://www.

mext.go.jp/a_menu/koutou/coe/)で公表された。

 

私大評価機関設置へ

 日本私立大学協会は11月18日、大学の教育や研究の実績、財務内容などを評価する第3者機関を来年度に設立することを決めた。私大独自の評価機関は初めて。評価を希望する大学は、教育型や研究型など各校の実情に応じたモデルで5〜10年ごとに評価を受け、評価結果は公表される。 (毎日11月20日付)

 

6.大学再編・統合関連

山形大学教育学部存続「断念」に疑問、反発が増加

 山形大学教育学部は、南東北3大学(山形、福島、宮城教育)の教員養成課程再編協議で、受け皿になる「担当校」を断念したが、教育学部の存続を目指して県が提案した試案に対して、教育学部から仙道富士郎学長に寄せられた「質問」「意見」が明らかになった。合計6件で、このうち教育学部を存続し今後の教員計画養成に前向きな意見2件に名を連ねた教官は35人に上り、学部全体の34%を占めた。 (山形新聞11月3日付)

学部存続を目指す県内の教育関係13団体が提出した公開質問状に対し、仙道学長は13日までに文書で回答した。しかし、具体的な考え方を求めた各論については態度を明確にせず、団体側は反発を強めている。 (山形新聞11月14日付)

 

埼玉大・群馬大統合協議中断、群馬で強い反発

 埼玉大学と群馬大学の統合をめぐる協議が中断している。当初は11月7日に両大学の学長懇談会を開き、学部配置などについて大筋で合意するはずだった。しかし、教育学部を埼玉大学に集約することに群馬県内で反発が強く、学長懇は急遽中止。2004年度中の統合に影響が出る可能性も出てきた。群馬県内では教育学部移転に反対する署名が10万人を超え、小寺弘之知事も「もう少し慎重に事を進めてもらえないか」と群馬大に要請した。群馬県の教育界で群馬大教育学部の存在は非常に大きい。同県教育委員会は「かなりの教員が群馬大卒だし、地元高校生の進学先としてもニーズがある。県民の声を聞き判断してほしい」と強調している。 (読売、産経、埼玉新聞117日付、東京1110日付)

「群馬に教育学部を残す会」が学長と会談

 市民団体「群馬に教育学部を残す会」の坂西輝雄代表(元県教育長)は11月21日、赤岩英夫群馬大学長と同大荒牧キャンパスで初めて会談した。坂西代表は教育学部移転に反対し、文部科学省や県などに陳情を行っていることや、移転反対の署名が20日までに13万1千人に達したことを説明した。同会は白紙撤回の態勢を強化するため、商店街での街頭署名などを行い広く市民に訴えることにしている。 (上毛新聞、東京・毎日・日経・読売・産経・朝日各地方版11月22日付け)

群馬大学教育学部教官が教育学部の存続を求める声明

 群馬大学教育学部教官105名のうち69名は12月3日、「私たちは、群馬に教育学部と大学院教育学研究科のキャンパスを残すことを求めます」と題する声明を発表した。 (読売、毎日、朝日、上毛新聞12月4日付)

 

弘前大教育学部存続求め、市民団体が要望書

 市民団体「弘前大学教育学部を守る会」代表の大内五介・元弘前大教育学部長、松原邦明・弘前大名誉教授らは6日、弘前大学の沿道正彦学長を訪ね、約8500人の署名を添えて、教育学部を弘前市に残すよう申し入れた。 (よみうり教育メール12月9日 http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku)

 

7.医学部関係

群馬大医学部で医師派遣人事権を第3者機関に

 群馬大学医学部で口腔外科の医局が関連病院に派遣した医師の給与の一部を上納させ、プールしていた問題で、同学部は12月11日、医師派遣の人事権を、教授を頂点とする診療科ごとの医局から、学外の有識者を入れてつくる「地域医療連携委員会」に移す方針を決めた。派遣のルールを透明化するためで、文部科学省によると、関連病院人事を第3者を含む期間が決めるのは異例という。 (朝日12月12日付)

 

弘前大が医局廃止へ寄付金など明朗化をはかる

 弘前大医学部は12月17日、教授を頂点とした「医局制度」を今年度中に廃止すると発表した。医局のかわりに20の講座・部門運営会議を設置。構成員は教官と医員のみとし、医局員だった外部の勤務医や研修医らは含まない。同大学の医局では、民間への医師派遣のやり方や医局単位で受け取る寄付金の扱いの不透明さが指摘されていた。医局制度は他大学でも「徒弟制度」などと批判が強く、全面廃止は大学医学部のあり方に一石を投じそうだ。 (朝日、毎日12月18日付)

 

8.学生、教育関連

76%の大学で学生の授業評価を導入

 昨年度時点で学生が教員の授業を評価する取り組みを導入した大学が、全国671大学の76%にあたる513校になっていることが、8日まとめた文部科学省の調査でわかった。4年前のほぼ2倍にあたる。 (朝日11月9日付)

 

40年ぶり学力調査

 「学力低下」をめぐる論議が続くなか、全国の高校約1400校で12日、文部科学省による学力調査(「高等学校における教育課程実施状況調査」)が実施された。無作為に選ばれた学級の3年生約10万5千人が対象。文部科学省が高校生を対象に全国一斉の学力調査をするのは40年ぶり。調査は1日だけで国語、数学、外国語、理科の4教科科目のうち、文部科学省の指定に従って1〜3科目を受ける。地理歴史、公民の9科目は来年度11月に実施される予定。文部科学省は2003年秋をめど結果をまとめ習熟度を把握し、学習指導要領の見直しなどに反映させる。 (朝日11月12日付夕刊)

 

センター試験会場、2006年度から高校で

 文部科学省は13日までに、2006年度から大学入試センター試験に外国語のリスニングテストを導入するのに伴い、すべての科目の試験会場を大学から高校に変更し、日程は従来の2日間とする方向で調整を始めた。国立大学協会は同日の総会で、文部科学省が高校などの了解を得て環境を整備することを条件に大筋で了承した。 (各紙11月14日付)

 

全学連、全寮連、女子学生の会が衆議院・参議院に要請行動

 全日本学生自治会総連合、全日本学生寮自治会連合、就職難に泣き寝入りしない女子学生の会は11月29日、●国立大学の学費値上げを行わないこと。勉学生活条件の改善を進めること。高等教育予算や私立大学への経常費助成を増額すること。学費のいっそうの値上げや学部間・大学間格差の導入をもたらす国立大学の法人化など、政府の進めている一連の「大学の構造改革」でなく、学生・院生・教職員の要求や意思を反映した国民に開かれた大学づくりをすすめること。●就職活動の早期化・長期化への対応を図り、就職活動と学業とが両立できるルールを設けること。また、就職活動のルールを検討している「就職採用情報交換連絡会議」への学生代表の参加を検討すること。●“有事法制がいう「指定公共機関」に大学を指定することを検討する“とした文部科学省の方針を、大学の戦争協力は認めないという立場に立って撤回すること。などを、衆参両院の文部科学委員、文教委員に要請した。

 

全院協が文部科学大臣に国立大学法人化撤回などを要請

 国立大学の法人化の撤回、3)文教予算の抜本的増額による大学院生の学費負担の軽減および教育・研究環境の改善、4)私学助成の大幅な拡充、5)専門大学院、法科大学院の設置に関しては十分な教育・研究環境を保障しながら行うこととし、受益者負担の強化によって学費の急激な高騰をまねかないこと、を文部科学大臣に要請した。

 

日本育英会奨学金で入学時に一時金30万円

 政府は11月30日、2003年度予算で日本育英会の新しい奨学金として、大学・短大などの入学時に必要な入学金や引越し代などの一時金30万円を貸与する制度を創設する方針を固めた。月々の一般の奨学金とは別枠。事業規模は2万5千人分の75億円で有利子を想定。 (毎日1130日付)

 

就職内定状況調査(101日現在)発表

文部科学省は10月1日現在の大学および高等専門学校来春卒業予定者の就職内定状況調査の結果を発表した。就職希望者に対する就職内定率は大学で64.1%(昨年比0.9%減)、短大で36.1%(同0.5%減)、高専では93.9%(同1.8%増)、全体では61.7%(同0.8%減)と昨年を下回り、厳しい状況が続いている。 (文部科学広報12月10日付)

 

外国人留学生受け入れ10万人に迫る

 文部科学省の平成14年外国留学生在籍状況調査(5月1日現在)がまとまり、わが国の高等教育機関(大学学部・大学院、短大、高専、専修学校(専門課程))に在籍する留学生は95,550人となり、前年に比べて16,730人(21.2%)の大幅増となった。種別では大学の学部、専修学校が大幅増、国公私立別では私学が大幅増、出身地域別ではアジア地域からが92.8%を占め、特に中国が大幅に増加し全体の61.3%を占めている。 (文部科学広報12月10日付、読売11月16日付夕刊)

 

文部科学省の検討会議が最終報告「新たな学生支援機関の在り方について」をまとめる

 文部科学省の「新たな学生支援機関の設立に関する検討会議」は12月12日、10月の「中間とりまとめ」に対する意見を参考にして最終報告をまとめ、公表した。日本育英会、(財)日本国際教育協会、(財)内外学生センター、(財)国際学友会、(財)関西国際学友会などを再編成し、非公務委員型の独立行政法人にすることが適当としている。 (文部科学省HP= http://www.mext.go.jp

 

9.女性研究者問題

文科省が女性の能力支援策を検討

 文部科学省は、大学や企業などで女性の能力を生かすための支援策について検討を始めた。傷害学習の視点から支援する。女性が出産、子育て後に現場復帰を容易にする学習プログラムを大学などで開発したり、女性研究者の割合を増やしたりすることも検討する。同省が女性に特化したキャリア支援策を打ち出すのは初めて。 (毎日11月18日付)

 

女性研究者の差別感3〜4倍東京医科歯科大の調査

 女性研究者は男性に比べて昇進、評価などの処遇に「格差がある」と感じている割合が3〜4倍高いことが、東京医科歯科大の都河明子教授(生化学)らの全国調査で明らかになった。格差の認識は雑務の負担や研究費の配分など、すべての項目で女性が男性を上回った。女性の3人に2人は研究の道を選んだ理由に「男女平等」をあげており、「公平な実力主義」イメージとは裏腹な実像が浮かび上がった。 (毎日11月25日付)

 

女性研究者の積極登用など初審議

 文部科学省の科学技術・学術審議会人材委員会は11月26日、女性研究者の活用について初めて審議した。研究者全体の11%、大学教授では8%という少ない現状を踏まえ、同程度の評価なら女性を積極的に登用する「ポジティブアクション」の導入や、女子学生が研究職に進みたいと思える教育など、幅広く話し合う。 (毎日11月27日付)

 

10.学術関連雑誌の特集等

「学術の動向」(日本学術会議)

02年11月号 特集:変革をめざす国立大学---学長たちは考える

02年12月号 特集:日本学術会議第138回総会-日本学術会議の今後の方向に向けて!/グローバル化時代に対応する高等教育の課題

「学術月報」(日本学術振興会、丸善発行)

02年11月号 特集:人文・社会科学の振興/02年12月号 特集:進化生物学

「大学と学生」(文部科学省高等教育局学生課編、第一法規出版発行)

02年11月号 特集:国立大学の地域貢献の促進について/02年12月号 特集:高等専門学校

「大学資料」(大学教育研究会監修、文教協会発行)

02年11月号(156) 中央教育審議会「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(答申)」、同「大学院における高度専門職業人養成について(答申)」、同「法科大学院の設置基準等について(答申)」、文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について」

「科学」(岩波書店発行)

02年12月号 特集:山の現在/03年 1月号 特集:海にもぐる動物の行動をさぐる

「政策研ニュース」(文部科学省科学技術政策研究所 http://www.nistep.go.jp)

02年11月号(169) 海外事情:大学研究機関における広報体制等に関する調査 他

02年12月号(170) 海外事情:地域の成長に向けたイノベーション活動の取り組み 他

 

 

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(本号は、主に2002年11月〜2002年12月の情報を扱っています)