日本の民主主義の将来を憂慮する 議会制民主主義をふみにじった「政治改革関連法」成立に抗議し,あくまでもその廃止を求める声明

 政治改革関運法案は,先の臨時国会会期の最終段階において,首相と一政党代表とのトップ会談という異常な手段によって事実上の決着をみた.われわれは,今回の政治改革関連法案なるものが,国民の願いである企業・団体献金の廃止などによる金権腐敗政治の一掃に背を向け,小選挙区制という民意を正しく反映しない反民主的選挙制度を導入するものであるため強く反対してきた.そして今回,その反国民的,反動的法案を通すために,国会審議の結果も国会運営のルールも無視した手段によって決着をつけた政府与党および自民党に対して激しい怒りを覚えるとともに,日本の民主主義の将来に関して極めて強い憂慮の念を禁じ得ない.
 憲法の精神に則るならば,同法案が参議院で否決されたことによって即刻廃案にするのが当然であった.まして両院協議会でも,いったんは決裂したのである.それにもかかわらず上記トップ会談の結果,すでに衆議院で否決された案に酷似したものが再び合意されたり,その後の参議院では,いったん否決したものと同じ内容の法案を可決するという,世界にも例を見ない暴挙がまかり通ったのである.正に反動的法律は反動的手段で成立する見本といえよう.
 われわれはまた,こうした暴挙に対し,ほとんどのマスコミが歓迎的態度を示していることにも強い憂慮の念を抱かざるを得ない.今回の暴挙の本質は大政党の合意があれば,国会審議の結果などは無視するという強権政治であり,ファシズムにつながるものである.そして正にそうしたやり方を制度的に保障しようとするのが,小選挙区制で少数意見を切り捨てる,今回の「政治改革」のねらいに外ならない.そうした方向にマスコミが加担するとき,社会正義や民主主義が次第に無視されていくことは,日本の歴史そのものが示すところである.われわれはマスコミに対しても猛省をうながすものである.
 1月31日に始まった通常国会で,トップ会談合意の実現のために政治改革関連法案の修正が行われようとしている.このような反民主主義的・反動的内容と手段によってつくり上げられたものが法律として日の目を見ないよう,またその一日も早い廃止を求め,われわれは今後もあらゆる努力を重ねていくことを決意するものである.それが平和と民主主義を守り,合理的・科学的社会を追求する科学者の良心に沿うものと確信する.
                    1994年2月1日
                     日本科学者会議